【S】―エス―01
第24章 兄弟
眩い光に包まれる中、瞬矢の右手が刹那の左胸を貫いた。ライトグレーのコートはじわりと赤く染まり、鮮血が手から滴る。
「――っ、……がは!」
口から吐血し後方へよたるも持ち堪えた。瞬矢は胸部を貫く右手を更に深く抉ると、刹那と自身の体を交差させるように横へ滑らせ一気に引き抜いた。
傷口からは赤黒い鮮血が飛沫を上げ、安定を失った刹那の体は前のめりに傾きどさりと倒れる。
瞬矢は赤黒い血液でまみれた右手の中に、赤く点滅を繰り出す小さな何かを確認する。人差し指と中指、そして親指でそれを摘まむ。
彼が取り出したのは、位置を特定する為の追跡装置だった。表面に罅の入った1センチメートルほどの丸いそれは、何度か弱々しく点滅した後、赤い光を失う。
軽く指先に力を加えると、装置は音を立てて瓦解し、瞬矢の手の内を離れ空中で塵芥となる。
(これさえなければ……)
俯きがちに半目し、水色の瞳を睫毛の奥にそっと潜める。思慮深きその横顔は、自身らの辿るべきこれからに思いを馳せているようでもあった。
「――っ、……がは!」
口から吐血し後方へよたるも持ち堪えた。瞬矢は胸部を貫く右手を更に深く抉ると、刹那と自身の体を交差させるように横へ滑らせ一気に引き抜いた。
傷口からは赤黒い鮮血が飛沫を上げ、安定を失った刹那の体は前のめりに傾きどさりと倒れる。
瞬矢は赤黒い血液でまみれた右手の中に、赤く点滅を繰り出す小さな何かを確認する。人差し指と中指、そして親指でそれを摘まむ。
彼が取り出したのは、位置を特定する為の追跡装置だった。表面に罅の入った1センチメートルほどの丸いそれは、何度か弱々しく点滅した後、赤い光を失う。
軽く指先に力を加えると、装置は音を立てて瓦解し、瞬矢の手の内を離れ空中で塵芥となる。
(これさえなければ……)
俯きがちに半目し、水色の瞳を睫毛の奥にそっと潜める。思慮深きその横顔は、自身らの辿るべきこれからに思いを馳せているようでもあった。