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【S】―エス―01

第24章 兄弟

 例えどんな形であろうと、瞬矢にとって彼はやはり弟であり、かけがえのない存在なのだ。


「――っ、瞬矢……」


 潤んだ薄紫色の瞳に温かな感情の光が揺らめき、両手で顔半分を覆う。手と指の隙間から、溢れ出した一筋の感情が線を描き伝い落ちた。


 また瞬矢自身も込み上げる熱いものを手首で拭い去り、胡座を崩し床に両手をつき天を仰ぐ。


 瞬間、左肩にずきんと走る鈍い痛み。その鈍痛が、自身もまた刹那により左胸を穿孔(せんこう)されていたことを思い出させた。


「……ってぇ。しかしなんとかしねーとな」


 熱を帯びた疼く痛みに顔を引きつらせ、再度天を仰ぎ瞬矢は言う。裂傷部分がすぐに再生し癒えることはなかった。


 視線の先の新たな次元は尚も膨張を続ける。動き始めた、世界の崩壊は止まらない。


 「でも、そんなこと……」言いかけた刹那の言葉を遮り、瞬矢は笑顔で応える。


「出来るさ。2人の力を合わせれば。なんたって俺たちは【特別】なんだからな」
 

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