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【S】―エス―01

第25章 白日のもとに

 ――201X年 1月20日。


 時刻は、午後2時丁度を切っていた。


 病室の壁に凭れたまま香緒里は、崩れ落ちたあの廃墟で瞬矢たちが助けられた当時のことを語った。


 山間の倉庫で解放された彼女が刹那の後を追い、そこで目にしたのは、もとは建物があった場所に悠然と浮遊する4メートルはあろうかという丸い光。


 次第に下降する空間を包み込む丸い光が眩い一閃と共に消え、香緒里たちが駆け寄り見たもの。


 互いに20センチメートルほどの間隔を置き、寄り添う形で地面に倒れる2人は、まるで本当の兄弟のようだったと。


 そして瞬矢たちのもとにいの一番で駆けつけたのは、他ならぬ東雲 暁であったことを。


 地面に膝をつき、心拍、呼吸、裂傷部分を交互に確認しながら彼は何度も何度も呟いていた。「絶対に死なせない」と――。


 ――『死なせるものか』。


 切なる言葉と温かな手。まだ記憶に新しい、先ほど見た夢の内容が脳裏を掠める。


 彼の言った台詞、とった行動。もしかするとそれこそが東雲 暁の……彼の本懐だったのかもしれない。


 記憶と寸分違わぬ温もりに、瞬矢は思いを馳せる。
 

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