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【S】―エス―01

第25章 白日のもとに

 いつの間にか、茜の嗚咽は聞こえなくなっていた。


「【S】は、あの廃墟の倒壊で死んだことにしておいたから」


「――えっ!?」


 思いもかけない香緒里の言葉に、瞬矢は意外とばかりに素っ頓狂な声を上げて再び彼女を見やる。


 真実を明らかにする立場である彼女が何をもってそのような発言をしたのかは、推測の域を出ず、彼女の口からその真意が語られる以外知る由(よし)はない。


 ここは理由を訊ねるべきか否か、瞬矢は表情を曇らせ再び思案に暮れる。そんな心中を察したのか、香緒里は重い口を開く。


「……そうね。あなたも知っておくべきかしら」


 きりりとした両目を伏せ床の辺りを見つめながら、なぜそのような思いに至ったのか、その経緯を語った。


 

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