
【S】―エス―01
第25章 白日のもとに
真実を全て明かしてしまうのは容易。だが、その後のことを思えばどうだろう。
結果は目に見えていた。
もしも事の全てを白日のもとに晒したとして、当事者である彼らは、少なからず肩身の狭い思いをするだろう。
香緒里は揺れ動く自身の正義感で板挟みにあいながらも、【S】についての真実をひた隠そうとする上層部に信用がおけず、結論としてこのような対策をとったのだ。
「これはあなたに渡しておくわ。きっと有益な物になるから」
おもむろにスーツのポケットから取り出したのは、黒い手帳だった。
一度刹那の手に渡った手帳は、あの廃墟倒壊の後、再び香緒里の手元に舞い戻ってきていたのだ。
瞬矢は片手でそれを受け取る。
「じゃあ、私はこの辺で」と言いその際、カツ、とヒールを鳴らす。
「それに――」
ちらりと茜を見やる。軽く口元を緩ませ言葉を続けた。
「折角のところ、邪魔しちゃ悪いから」
「?」
なんのことかと小首を傾げる瞬矢の様子に、香緒里はくすりと笑い踵を返すと、足早に病室を去って行った。
結果は目に見えていた。
もしも事の全てを白日のもとに晒したとして、当事者である彼らは、少なからず肩身の狭い思いをするだろう。
香緒里は揺れ動く自身の正義感で板挟みにあいながらも、【S】についての真実をひた隠そうとする上層部に信用がおけず、結論としてこのような対策をとったのだ。
「これはあなたに渡しておくわ。きっと有益な物になるから」
おもむろにスーツのポケットから取り出したのは、黒い手帳だった。
一度刹那の手に渡った手帳は、あの廃墟倒壊の後、再び香緒里の手元に舞い戻ってきていたのだ。
瞬矢は片手でそれを受け取る。
「じゃあ、私はこの辺で」と言いその際、カツ、とヒールを鳴らす。
「それに――」
ちらりと茜を見やる。軽く口元を緩ませ言葉を続けた。
「折角のところ、邪魔しちゃ悪いから」
「?」
なんのことかと小首を傾げる瞬矢の様子に、香緒里はくすりと笑い踵を返すと、足早に病室を去って行った。
