
【S】―エス―01
第25章 白日のもとに
◇3
香緒里が去り、病室をこれまで以上の静けさが支配する。
瞬矢の脳裏にこびりついて離れない言葉。
――【sample】、【廃棄】。彼女が倉庫で見た複製たちと、そしてそこに刹那がいた事実。
もしかすると、刹那はすでに自分の知り得ない何かを知っていたのではないか。
ふっと瞬矢の脳裏にそのような考えがよぎる。それは、香緒里の抱いていた疑念と全く同じものだった。
だが、それを確かめる手段は――ない。
再び彼が目覚め、その時訊ねるより他にそれ以上の確固たる術は、ない。
瞬矢は黒い手帳に視線を落とす。泣き疲れ眠る茜に気を配りながら、静かにページを捲る。
『20XX年 12月2日。
当初、東雲 暁は息子の複製である彼らを兵器に仕立てることを強く反対していた。そもそも、自分の行っていることが法に抵触すると知っていたからだ。
国は、そんな彼の思考を利用した』
『責任者は彼で決めるのも彼だ。我々も従うしかない――』
その下に走り書きで外という字に丸印がつけられ、右側へ矢印が引かれている。その先は上手く読み取れない。
ひとまず解読を諦め、続きに目を通す。
香緒里が去り、病室をこれまで以上の静けさが支配する。
瞬矢の脳裏にこびりついて離れない言葉。
――【sample】、【廃棄】。彼女が倉庫で見た複製たちと、そしてそこに刹那がいた事実。
もしかすると、刹那はすでに自分の知り得ない何かを知っていたのではないか。
ふっと瞬矢の脳裏にそのような考えがよぎる。それは、香緒里の抱いていた疑念と全く同じものだった。
だが、それを確かめる手段は――ない。
再び彼が目覚め、その時訊ねるより他にそれ以上の確固たる術は、ない。
瞬矢は黒い手帳に視線を落とす。泣き疲れ眠る茜に気を配りながら、静かにページを捲る。
『20XX年 12月2日。
当初、東雲 暁は息子の複製である彼らを兵器に仕立てることを強く反対していた。そもそも、自分の行っていることが法に抵触すると知っていたからだ。
国は、そんな彼の思考を利用した』
『責任者は彼で決めるのも彼だ。我々も従うしかない――』
その下に走り書きで外という字に丸印がつけられ、右側へ矢印が引かれている。その先は上手く読み取れない。
ひとまず解読を諦め、続きに目を通す。
