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【S】―エス―01

第25章 白日のもとに

 
『20XX年 12月21日。

 数ヶ月ほど前から屋敷に出入りしている男。明らかに日本人ではない。
 この計画は、もう外と通じてしまったのだろうか。
 このことを報告したが、本部は何も言ってこない』


『この実験はどこへ向かうのか?
 いつか我々は、この報いを受けるだろう。

 願わくば彼らの未来に光あらんことを――』


 内容はそこで途切れていた。


 間違った形かもしれないが、少なくとも初めは『人』として造り出され、愛情を向けようとしてくれていた。


《そうだろ? ……刹那》


 届くかどうか分からない。だが眠り続ける刹那に向けて、そっと思念を送った。


 一瞬だが、刹那の表情に穏やかなものが窺えたのは気のせいだろうか。


 よもやそれは、窓辺から差し込む麗(うらら)かな陽気のせいなのかもしれない。


 窓辺から吹き込むそよ風にカーテンが揺らぎ、瞬矢は晴れ渡った空へと視線を送る。窓の外では、季節外れの黒い揚羽蝶がひらりひらりと宙を游ぐ。


「ほんと、いい天気だ……」
 

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