
【S】―エス―01
第27章 消えない過去
いきなり何を言い出すのか。だが彼女の表情、そして口振りは至って真剣なものだ。
「そりゃあ、またいきなりだね。けど、僕に頼んだところでどうしようもないよ?」
半目した刹那はすっとぼけてみせる。対して彼女は刹那の言葉をくすりと一笑に伏し、こう返す。
「レディ・メイからアナタのことも聞いてるの。だから、何も隠す必要なんてないわ。――『刹那(セツナ)』」
『刹那』。明かしてもいないのにいきなり自身の名前を挙げられ、目を見開く。
自分をこの名前で呼ぶ者は、あの事件の真相を知る人間以外にいないからだ。
(『聞いている』……いったいどこまでを?)
隠す必要がないということは、つまり全て知っているのだろうか。
店内の賑わいがどこか遠くに聞こえ、この場所だけ妙に隔絶された空間に感じられた。対して彼女――リンは、肯定するかのような冷笑を見せる。
「先日、ここで起きた事件のことは?」
「そりゃあ、またいきなりだね。けど、僕に頼んだところでどうしようもないよ?」
半目した刹那はすっとぼけてみせる。対して彼女は刹那の言葉をくすりと一笑に伏し、こう返す。
「レディ・メイからアナタのことも聞いてるの。だから、何も隠す必要なんてないわ。――『刹那(セツナ)』」
『刹那』。明かしてもいないのにいきなり自身の名前を挙げられ、目を見開く。
自分をこの名前で呼ぶ者は、あの事件の真相を知る人間以外にいないからだ。
(『聞いている』……いったいどこまでを?)
隠す必要がないということは、つまり全て知っているのだろうか。
店内の賑わいがどこか遠くに聞こえ、この場所だけ妙に隔絶された空間に感じられた。対して彼女――リンは、肯定するかのような冷笑を見せる。
「先日、ここで起きた事件のことは?」
