
【S】―エス―01
第27章 消えない過去
木製の、茶色いテーブルに肘をついてグラスの氷に視線を落とし、「関係ない」と言い切る刹那の声を遮り彼女は言う。
「これを見ても?」
そして、あくまでも平静さを保とうとする刹那の眼前にリンは何かを突き出した。
それは紙面で、刹那はそこに書かれてあったものにそれとなく視線を移す。
『被害者の左胸には、アルファベットの【S】が――』
それは先日起きた事件が模倣であることを断定づける決定的な内容だった。
そして、その記事と今までの話の内容から彼女が言わんとすること。
「じゃあ、その人物って……」
リンは唇を固く結び、意志の強そうな眼差しでこちらを見据え、黙したままゆっくりとひとつ頷いた。
そう。理由こそ話さなかったが、彼女――リンは顔も名前も知れぬその犯人を見つけ出し、そして殺してくれというのだ。
それは決して難しい話ではない。今までどおり、何も考えず標的を見つけ出し殺せば済む話だ。だが……。
「このことを知ったのだから、きっとアナタは断れない」
彼女は去り際、自身の側にあったコースターをすっと差し出し、すれ違いざまに隣で「ねぇ、日本の【S】」そう呟く。
「――っ!」
「これを見ても?」
そして、あくまでも平静さを保とうとする刹那の眼前にリンは何かを突き出した。
それは紙面で、刹那はそこに書かれてあったものにそれとなく視線を移す。
『被害者の左胸には、アルファベットの【S】が――』
それは先日起きた事件が模倣であることを断定づける決定的な内容だった。
そして、その記事と今までの話の内容から彼女が言わんとすること。
「じゃあ、その人物って……」
リンは唇を固く結び、意志の強そうな眼差しでこちらを見据え、黙したままゆっくりとひとつ頷いた。
そう。理由こそ話さなかったが、彼女――リンは顔も名前も知れぬその犯人を見つけ出し、そして殺してくれというのだ。
それは決して難しい話ではない。今までどおり、何も考えず標的を見つけ出し殺せば済む話だ。だが……。
「このことを知ったのだから、きっとアナタは断れない」
彼女は去り際、自身の側にあったコースターをすっと差し出し、すれ違いざまに隣で「ねぇ、日本の【S】」そう呟く。
「――っ!」
