
【S】―エス―01
第27章 消えない過去
少年の褐色の目はこちらを向いているが、その瞳に刹那の姿は映らない。その幼い両目は別の何かを捉えている。
自分そっくりな彼を手にかける瞬間を想像してみる。
ずっと閉ざしてきた忌まわしい過去の一端に触れたようで、込み上げる嘔吐感に思わず膝をつき声なき声を漏らす。
すでに世界はオレンジ色に染まっていた。
「S‐145っ!」
つい最近、聞いた覚えのある声に刹那は再度前方を見やる。そこには長い黒髪を後ろでひと纏めにし、全体的にすらりとした後ろ姿。
それは、紛れもなくリンその人であった。教会の壁に刻まれた『L・M』という文字と、彼女がコースターの裏に書いた筆跡とが照らし合わされる。
「リン……レディ・メイ……?」
彼女は、初めからこのことを知っていたのだろうか。この少年が関わっていると。
振り向いた彼女の鋭くもどこか悲しみに満ちた光を放ち揺らめく瞳に、刹那はあやふやではあるが何やら引っかかるものを感じずにはいられなかった。
――午後4時05分。
オレンジ色の太陽は西へと傾き、やがて日没を迎えようとしていた。
**
自分そっくりな彼を手にかける瞬間を想像してみる。
ずっと閉ざしてきた忌まわしい過去の一端に触れたようで、込み上げる嘔吐感に思わず膝をつき声なき声を漏らす。
すでに世界はオレンジ色に染まっていた。
「S‐145っ!」
つい最近、聞いた覚えのある声に刹那は再度前方を見やる。そこには長い黒髪を後ろでひと纏めにし、全体的にすらりとした後ろ姿。
それは、紛れもなくリンその人であった。教会の壁に刻まれた『L・M』という文字と、彼女がコースターの裏に書いた筆跡とが照らし合わされる。
「リン……レディ・メイ……?」
彼女は、初めからこのことを知っていたのだろうか。この少年が関わっていると。
振り向いた彼女の鋭くもどこか悲しみに満ちた光を放ち揺らめく瞳に、刹那はあやふやではあるが何やら引っかかるものを感じずにはいられなかった。
――午後4時05分。
オレンジ色の太陽は西へと傾き、やがて日没を迎えようとしていた。
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