
【S】―エス―01
第28章 愛憎の刃
次いで耳にしたのは、冷酷無比とは当面かけ離れた言葉だった。
最早、顔が見えないほどに深く俯き肩を震わせる刹那にリンの心の内で再燃していた報復の執念は、燃焼半ばで水をかけられた木炭のように鎮火してゆく。
すっかり毒気を抜かれ、力の抜けた手から血のついたナイフが、ぽろ、と滑り落ちる。
冷酷無比――それが今まで抱いていた彼へのイメージ。
だが、今目の前にいる人物――刹那はどうだろう。彼は、ずっと聞かされ続けてきた『感情のない殺人兵器』とはまるっきり正反対のものではないか。
(本当のアナタは……どっち?)
計り知ろうと思うものの、表情は俯き垂れた髪の毛に隠れて窺えない。
「刹那……」
すっかり脱力した刹那の手を振りほどき彼の肩に右手を伸ばすと、そっと撫で上げ頬に触れた。
そして再度彼の瞳を覗き見て気づく。憎悪の対象でありながら、なぜこれほどまでに興味を引かれたのか。
彼もまた、自分と同様に孤独を抱えていたのだと。
少し顔を持ち上げたことで互いの瞳がかち合い、見下ろすように彼もこちらを覗き込んでいた。
最早、顔が見えないほどに深く俯き肩を震わせる刹那にリンの心の内で再燃していた報復の執念は、燃焼半ばで水をかけられた木炭のように鎮火してゆく。
すっかり毒気を抜かれ、力の抜けた手から血のついたナイフが、ぽろ、と滑り落ちる。
冷酷無比――それが今まで抱いていた彼へのイメージ。
だが、今目の前にいる人物――刹那はどうだろう。彼は、ずっと聞かされ続けてきた『感情のない殺人兵器』とはまるっきり正反対のものではないか。
(本当のアナタは……どっち?)
計り知ろうと思うものの、表情は俯き垂れた髪の毛に隠れて窺えない。
「刹那……」
すっかり脱力した刹那の手を振りほどき彼の肩に右手を伸ばすと、そっと撫で上げ頬に触れた。
そして再度彼の瞳を覗き見て気づく。憎悪の対象でありながら、なぜこれほどまでに興味を引かれたのか。
彼もまた、自分と同様に孤独を抱えていたのだと。
少し顔を持ち上げたことで互いの瞳がかち合い、見下ろすように彼もこちらを覗き込んでいた。
