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【S】―エス―01

第29章 S‐145

 だがそれも束の間。息づかいが離れたかと思うと、突き放し組み伏せ反動と前方へかかった圧でわずかにベッドが軋む。


 午後の日差しが、窓ガラスを通してリンの表情に自然的な美しい陰影を作り上げた。


 両手はするりと肩を準えて、刹那の首にかけられる。


 はだけた胸元から覗く金色のペンダントトップには、『L・M』の装飾があしらわれていた。


 ――『リン・メイ』、『レディ・メイ』。


 彼女の存在を示すそれは、日の光に照らされてきらきらと輝く。


 ゆっくりと体を起こすと、ふっと息を吐き、刹那を見下ろす。首に両手をかけたまま彼女は言った。


「忘れないで、今でもアナタはワタシの敵(かたき)。ここで殺してあげてもいいのよ?」


 初めは冷たく説き伏せ、次第に挑発するような口調へと変わってゆく。だが刹那はその言動に微塵も動揺を見せず、むしろ笑顔でそれに応える。


「君に殺されるなら喜んで」


 その言葉を聞き、リンは首にかけた両手をするりと緩めて「そう」とにわかに微笑む。


「なら……、殺してあげる」


 どこか嬉しそうに、馬乗りとなった彼女は顔を埋め、唇は刹那の体を這うように下へと辿った。


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