
【S】―エス―01
第29章 S‐145
ゆっくりと金属製の重たい扉が開く。足を踏み入れたそこは、温もりを一切感じさせない全面石造りの『部屋』と呼ぶにはあまりにも殺風景な場所。
そこにいたのは、自分そっくりな茶色い髪と褐色の瞳を有する、齢(よわい)10歳ほどの少年だった。
残像と思念で繰り返し視た時と同様に焦げ茶色のコートを着た彼は、部屋の端の冷たい壁に凭(もた)れ膝を抱えている。
部屋の中ほどで歩みを止め、そっと穏やかな笑みと口調でその少年に語りかけた。
「やぁ」
振り向き刹那を映す少年の瞳に光はなく、虚ろ。他者が自分の領域に侵入しているにもかかわらず、その反応はどこか他人事のようだ。
ぱっちりとした両目でしばし見つめた後、
《――誰?》
「――!」
その声は、直接刹那の頭の中に響いてきた。
そこにいたのは、自分そっくりな茶色い髪と褐色の瞳を有する、齢(よわい)10歳ほどの少年だった。
残像と思念で繰り返し視た時と同様に焦げ茶色のコートを着た彼は、部屋の端の冷たい壁に凭(もた)れ膝を抱えている。
部屋の中ほどで歩みを止め、そっと穏やかな笑みと口調でその少年に語りかけた。
「やぁ」
振り向き刹那を映す少年の瞳に光はなく、虚ろ。他者が自分の領域に侵入しているにもかかわらず、その反応はどこか他人事のようだ。
ぱっちりとした両目でしばし見つめた後、
《――誰?》
「――!」
その声は、直接刹那の頭の中に響いてきた。
