
【S】―エス―01
第29章 S‐145
その声に被せるようにして、また別の声が。
「『あれ』も一緒だ!」
物々しい迷彩服姿の武装した衛兵たちが、雪崩れ込むようにして2人を取り囲む。
「……くっ」
前後共に行く手を阻まれ立ち止まる。まさしく八方塞がりとはこういうことなのだろう。
すると角から、30代後半ないし40代くらいの男が武装した衛兵の間を縫い姿を現す。男は、言葉の端にわずかな感嘆を込め言った。
「日本の【S】は死んだと聞かされていたが、まさか本当に生きていたとは」
白衣姿に、眼鏡をかけた金髪碧眼のその男は、低く落ち着いた声色でとても流暢な日本語を話す。それは、刹那が残像に幾度となく視たあの男であった。
「ハロルド……」
くすんだ金髪、白衣のその男を目視した咲羅は身を竦め、刹那のコートをきゅっと握り後ずさる。
(『ハロルド』? そうか、やっぱりこの男が……)
「『それ』は我々の研究成果。こちらに渡して貰おうか? できないなら、消えてもらうしかないが」
その言葉に刹那は眉をひそめる。少年――咲羅を『それ』と呼び、まるで物のように扱う彼の言動が気に入らなかったのだ。
「『あれ』も一緒だ!」
物々しい迷彩服姿の武装した衛兵たちが、雪崩れ込むようにして2人を取り囲む。
「……くっ」
前後共に行く手を阻まれ立ち止まる。まさしく八方塞がりとはこういうことなのだろう。
すると角から、30代後半ないし40代くらいの男が武装した衛兵の間を縫い姿を現す。男は、言葉の端にわずかな感嘆を込め言った。
「日本の【S】は死んだと聞かされていたが、まさか本当に生きていたとは」
白衣姿に、眼鏡をかけた金髪碧眼のその男は、低く落ち着いた声色でとても流暢な日本語を話す。それは、刹那が残像に幾度となく視たあの男であった。
「ハロルド……」
くすんだ金髪、白衣のその男を目視した咲羅は身を竦め、刹那のコートをきゅっと握り後ずさる。
(『ハロルド』? そうか、やっぱりこの男が……)
「『それ』は我々の研究成果。こちらに渡して貰おうか? できないなら、消えてもらうしかないが」
その言葉に刹那は眉をひそめる。少年――咲羅を『それ』と呼び、まるで物のように扱う彼の言動が気に入らなかったのだ。
