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【S】―エス―01

第4章 あかねいろ

 結局情報を得られず、思案に暮れる中で帰路につく。


 これまでの経過を茜に報告しなければならなかったが、結果はあまり芳(かんば)しいものではなかった。


 しかし報告しない訳にもいかず、どうしたものかと眉間に皺を寄せる。


(ん? 火事……か)


 明々(あかあか)と夕闇を照らすその炎から目を離すことができず、ただその場に立ち尽くす。


 突如として心臓が激しく脈打ち、全身の血が逆流するようなそんな感覚に襲われる。


「――ぐ……あ……っ!」


 直後、ぎりぎりと頭部を締め付けられるような痛みに襲われる。耐えきれず、両手で頭を抱え膝をつく。


 吐き気と定まらない視線の中、見開かれた紺色の双眸に映る炎は、まるで意思を持つかのように揺らめく。


 ―― 炎、赤、

    焦げた臭い……。


 全てが瞬矢に今、この現実にはない光景を見せた。それは、炎の向こうで笑う1人の少年だった。


 少年は笑顔のまま言う。


「――君と僕は同じなんだよ」


 ――――


「やめろォォ!」


 慟哭と共に紺色の瞳はより一層青く光を帯び、意識が思い出すことを拒絶し、前のめりにどさりと地面へ突っ伏した。
 

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