テキストサイズ

【S】―エス―01

第4章 あかねいろ

 ――翌朝、瞬矢は見慣れた階段の2階を過ぎた辺りで目を覚ます。どうやら、自力で戻ろうとしたものの力尽きたらしい。


「……っ」


 わずかに残る目眩に顔を歪め頭を押さえる。


 よろめきながらも階段を上りきり部屋の入り口近くの壁に凭れ掛かると、そのままずるずると力なく座り込む。


 ふと思い出したかのように服の右袖をまくり上げる。そこには、注射針の痕が残っていた。


 それを見て瞬矢は、やはり夢ではなかったと右手で視界を遮り思い返す。


 あの時――。


 気づけば誰かに引きずられ、路地裏の外壁に身を預けていた。瞬矢は人物の姿を確認しようとしたが、暗がりと逆光の為はっきりと判別できなかった。


 薄いコートのようなものを着た人物は目の前に膝をつくと何かを確認するかのように手を当て、瞬矢の両目を片方ずつ覗き込む。


「Level 3、Sc……nL……b――」


 朦朧(もうろう)としていたせいで所々しか聞き取れなかったが、人物は何やら意味不明な言葉を口にする。そしてポケットから何かを取り出す。


 それは、幅1センチくらいの注射器に半分ほど入れられた、半透明の水色の液体だった。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ