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【S】―エス―01

第30章 日本へ……

 恐らく彼の中では、目に映るもの全てが新鮮なのだろう。しきりに「デンワ、デンワ!」と手にした携帯を差し出してくる。


「セツナ?」


 携帯を差し出したままきょとんとこちらを見上げるも気づけず……。


 以前は、奪ってしまえばいいとさえ思っていた。それが今では、なんとなく2人の間に自分の入り込む余地などないように思えてならなかったのだ。


 勿論、他にも理由はあるが、前述した内容――それが刹那が2人から距離を置いた理由のうちのひとつでもある。


 自分が惚けていたことに気づかされたのは、隣にいた咲羅が着ているハイネックシャツの裾をぐい、と引いた時。


「分かったよ」


 焦れたように唇を尖らせ見上げる咲羅に対して刹那は仕方なく笑い、差し出された携帯を受け取る。


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