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【S】―エス―01

第30章 日本へ……

 ――201X年 6月30日。


 午後4時10分。ドアを開けると、そこには相変わらず黒地のスーツに身を包んだリン・メイが立っていた。


 当初は作られた笑みを湛えるリンだったが、刹那の傍らにいる咲羅を視界に捉え「あら?」とそちらへ視線を移す。


「その子、もしかして……」


 リンの問いかけに、刹那もまた咲羅へと視線を送り答える。


「ああ、咲羅っていうんだ」


「サク……ラ?」


 名前を反復した彼女は、やや訝しげに件の少年『咲羅』の様子を窺う。


 そんなリンの視線に、咲羅は後方へと後ずさりすがるように刹那の背後へ身を潜める。


 理由は知れないが彼女を警戒していると察し、「すぐに戻るから」と部屋にいるように促す。


 咲羅が彼女に対し警戒心を抱いている以上、引き会わせない方がいいと考えたからだ。


 そして自分は部屋の外に出て、ドアをゆっくり閉めると眼前のリンに視線を送る。


「やっぱり、アナタには殺せなかったようね」


 その言葉をかわきりに、一瞬にして彼女を壁へと捕らえる。視線の先の彼女は臆せずじっと見据え、むしろ挑発的な瞳だ。
 

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