
【S】―エス―01
第31章 ハローバイバイ
頬を緩め低くそう漏らし、上着のポケットから携帯を取り出す。画面上に表示された写真を見た瞬矢が、感嘆混じりに宣(のたま)う。
「おっ、あの時撮った写真か。懐かしいな。それ、まだそのままにしてたのか」
からかい半分な瞬矢の台詞に携帯画面を一瞥し、再び刹那は苦笑する。
「これ設定したの、兄さんじゃないか」
そう言いつつも今だに変更していないところを見ると、案外気に入っているのかもしれない。
顔を合わせた当初に生じた沈黙も、ただお互いかける言葉が見つからなかっただけで、単なる杞憂――考えすぎだったのかもしれない。
やりようのない沈黙ばかりの空気を、どうやらこの『咲羅』という少年が繋いでくれたようだ。
「まぁ、あれだ。ずっとそんなとこにいるのもなんだし、入れよ」
続けて膝を屈め「ようこそ」そう言い、ぽんと咲羅の頭に手を置き笑う。覗く空はすでに日が陰り始め、東の山並みにわずかばかりの夕闇を湛える。
「ああ。そうさせてもらうよ」
瞬矢の言葉にそう応えた刹那は薄く笑みを湛え、咲羅を引き連れ玄関へと足を踏み入れた。
「おっ、あの時撮った写真か。懐かしいな。それ、まだそのままにしてたのか」
からかい半分な瞬矢の台詞に携帯画面を一瞥し、再び刹那は苦笑する。
「これ設定したの、兄さんじゃないか」
そう言いつつも今だに変更していないところを見ると、案外気に入っているのかもしれない。
顔を合わせた当初に生じた沈黙も、ただお互いかける言葉が見つからなかっただけで、単なる杞憂――考えすぎだったのかもしれない。
やりようのない沈黙ばかりの空気を、どうやらこの『咲羅』という少年が繋いでくれたようだ。
「まぁ、あれだ。ずっとそんなとこにいるのもなんだし、入れよ」
続けて膝を屈め「ようこそ」そう言い、ぽんと咲羅の頭に手を置き笑う。覗く空はすでに日が陰り始め、東の山並みにわずかばかりの夕闇を湛える。
「ああ。そうさせてもらうよ」
瞬矢の言葉にそう応えた刹那は薄く笑みを湛え、咲羅を引き連れ玄関へと足を踏み入れた。
