テキストサイズ

【S】―エス―01

第31章 ハローバイバイ

 あの冷たく湿気を帯びた地下通路とはまた違うオレンジ色の照明が、2人を温かく出迎える。


「咲羅、おいで」


 茜は再び笑顔を向け、手を差し伸べる。当の咲羅は一度刹那に視線を送ると、促されるまま躊躇(ためら)いがちにおずおずと踏み出す。


「しかし、またえらい身軽で来たな」


 感嘆混じりに、瞬矢が一言。それに対し、「荷物は少ない方がいいからね」そうくすりと笑みを交え応える刹那。


 後方で交わされる2人の会話に、咲羅へと視線を送る茜の表情は一層にこやかなものとなった。


 そんな他愛もないやり取りと穏やかな空気の中、金属音を上げて玄関のドアが閉まり――。


 こうして、瞬矢と茜、刹那、そして咲羅の4名が一堂に会することとなった。


 玄関先の門灯に、暖かなオレンジ色の光がぽつりと灯る。




     **

ストーリーメニュー

TOPTOPへ