
【S】―エス―01
第31章 ハローバイバイ
瞬矢の言わんとし、寸でで呑み込んだ内容を察してか「そうだね」と、たった一言肯定する。恐らくそれは刹那も感じていたことだからであろう。
「言ったろ? 僕らと同じなんだ。きっと、自分が目の前で死ぬところも見てきたはず」
幸か不幸か、瞬矢にはその頃の記憶がぽっかりと抜け落ちていた。あるのは、刹那により視せられた断片的な記憶ばかり。
――『自分殺し』。
それは、兵器として造り出された彼らに必要とされない、感情を殺す為の強制的行為。
そんなものを見せられ、させられてきたら、厭(いや)でも自らの感情の蓋を閉じてしまうだろう。
もし自分がその頃のことを覚えていたらと思うと、考えるだけでおぞましい。
前屈みに身を乗り出し、顔の前で組んだ両手を口に当てる。オレンジ色の明かりを映す黒い両目は細められ、眉間にはにわかに皺(しわ)が寄せられる。
静けさの中で、外の草むらに隠れて鳴く虫の声だけがやけにはっきりと聞こえた。
その静寂を打ち破り虫の音に割り入ったのは、刹那の発した一言。
「だからさ、笑わせてやりたいんだ」
「言ったろ? 僕らと同じなんだ。きっと、自分が目の前で死ぬところも見てきたはず」
幸か不幸か、瞬矢にはその頃の記憶がぽっかりと抜け落ちていた。あるのは、刹那により視せられた断片的な記憶ばかり。
――『自分殺し』。
それは、兵器として造り出された彼らに必要とされない、感情を殺す為の強制的行為。
そんなものを見せられ、させられてきたら、厭(いや)でも自らの感情の蓋を閉じてしまうだろう。
もし自分がその頃のことを覚えていたらと思うと、考えるだけでおぞましい。
前屈みに身を乗り出し、顔の前で組んだ両手を口に当てる。オレンジ色の明かりを映す黒い両目は細められ、眉間にはにわかに皺(しわ)が寄せられる。
静けさの中で、外の草むらに隠れて鳴く虫の声だけがやけにはっきりと聞こえた。
その静寂を打ち破り虫の音に割り入ったのは、刹那の発した一言。
「だからさ、笑わせてやりたいんだ」
