
【S】―エス―01
第31章 ハローバイバイ
◇3
午後10時02分。
あてがわれた2階の部屋のベッドで眠る咲羅。その姿を、傍らの椅子に座って見守りながら刹那は思う。
(周りに信頼できる笑顔が沢山あれば、きっと咲羅も……)
そう思わずには、願わずにはいられなかった。
咲羅の額にかかった茶色い髪を撫でながら刹那は自身の中に芽生えた咲羅への感情に、自分にもそんなことを思える心があったのかと、ふっと失笑する。
それは、他者への愛情とは縁遠かった彼が今までに抱いたことのない、無償の感情であった。
――それから10日ほどが過ぎ、8月1日。午後3時40分。
「これ、何?」
咲羅は玄関で茜の持っているビニール袋に入った初めて見る色とりどりの物体に褐色の目を丸くし、興味深々といった様子だ。
「おっ、花火か」
少し離れて様子を見ていた瞬矢が袋の中を覗き込み、すかさず2人の間に割って入る。
「花……火?」
小首を傾げる咲羅に対し、「うん、後でしよう」白いワンピースチュニックにショートパンツ姿の茜はにこやかに応え、咲羅もまた笑顔でそれに頷く。
午後10時02分。
あてがわれた2階の部屋のベッドで眠る咲羅。その姿を、傍らの椅子に座って見守りながら刹那は思う。
(周りに信頼できる笑顔が沢山あれば、きっと咲羅も……)
そう思わずには、願わずにはいられなかった。
咲羅の額にかかった茶色い髪を撫でながら刹那は自身の中に芽生えた咲羅への感情に、自分にもそんなことを思える心があったのかと、ふっと失笑する。
それは、他者への愛情とは縁遠かった彼が今までに抱いたことのない、無償の感情であった。
――それから10日ほどが過ぎ、8月1日。午後3時40分。
「これ、何?」
咲羅は玄関で茜の持っているビニール袋に入った初めて見る色とりどりの物体に褐色の目を丸くし、興味深々といった様子だ。
「おっ、花火か」
少し離れて様子を見ていた瞬矢が袋の中を覗き込み、すかさず2人の間に割って入る。
「花……火?」
小首を傾げる咲羅に対し、「うん、後でしよう」白いワンピースチュニックにショートパンツ姿の茜はにこやかに応え、咲羅もまた笑顔でそれに頷く。
