
【S】―エス―01
第31章 ハローバイバイ
――翌、8月2日。
平穏を打ち破るかの如く、突如窓ガラスを叩き突風が襲う。
「なんだ!?」
玄関のドアを開け外へ出た刹那たちは、事の元凶に天を仰ぎ目を細める。
上空には一機の黒いヘリが。垂れ込めた雲を掻き回し、草葉と土煙を巻き上げ着陸する。
やがてプロペラの回転は止まり、開いた入り口。そこから現れた見覚えのある1人の人物――。
「……リン」
長い黒髪を後ろでひとつに結わえた黒いスーツ姿の人物に、刹那は思わずぽつりと溢す。
「どうしてここが……!?」
確かに行き先を告げたが、どこにいるかまでは言っていない。咲羅の追跡装置も全て除去し、居場所の特定も容易ではないはず。
焦燥感あふれる刹那の問いに答えるかの如く、口元にくすりと笑みを浮かべ開口する。
「あの時、言ったでしょう? 『また会いましょう』って」
続けて「また会ったわね」と冷笑を浮かべた。
状況が呑み込めない咲羅は、刹那と眼前のリン、両者を何度も見比べていた。瞬矢と茜も刹那へ視線を送る。
「逃げきれると思った?」
