テキストサイズ

【S】―エス―01

第31章 ハローバイバイ

 リンは小首を傾げ今一度口元に微笑を湛えると咲羅へと視線を移し、


「咲羅、アナタも……本気でずっと彼らと一緒にいられると思ったの?」


 予想だにしない言葉を突きつけた。


「……えっ?」


 傍らにいた咲羅の表情が固まる。


 次いで発せられたのは、今までの彼女からは想像もつかないほど残酷な言葉。


「彼らはアナタの思いにつけ込んで騙し、利用しようとしてたにすぎないのよ」


「リン!」


 左足を半歩前へ踏み出しリンの言葉を牽(けん)制する刹那。だが彼女のその言葉は、咲羅の心理を揺さぶるには十分すぎた。


 俯く咲羅の表情は、頭上に厚い雲を湛え広がる空模様のように曇っていた。


「さぁ、どうするの?」


 その一言をきっかけに、繋いだ手の先の温もりがするりと離れてゆく。


「!?」


 咲羅は自らの意思で刹那の手を放したのだ。


「……嘘つき」


 尚も俯いたままぽつり呟く咲羅は刹那たちのもとを離れ歩み出る。暗雲垂れ込めた空は、今にも泣き出しそうだ。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ