
【S】―エス―01
第31章 ハローバイバイ
刹那たちから離れ5メートル、丁度中ほどまで来たところでリンが「さぁ、こちらへ」と手を差し伸べ、引き寄せられるかのように再び歩を進めた。
「咲……羅……?」
だが咲羅はそのまま振り返らず、開いた距離はどんどん離れてゆく。
「咲羅!」
刹那の呼びかけに立ち止まると振り返り、だがしかし無表情でじっと佇む。
このまま行かせてはいけない――。そんな思いから、咲羅のもとへ駆け寄ろうとするが、
《――来るな嘘つき!》
殺意と共に例外なく誰のもとにも届いた思念。ごうっという音を立てて咲羅を中心に生じた風圧が刹那たちを襲う。
「――っ!」
弾き飛ばされぬよう地に踏ん張りをつけ、風圧から庇うように顔の前で翳(かざ)した腕。その間から目を細め離れた咲羅を見据える。
棚引く茶色い髪の間から一瞬覗いた咲羅の虹彩は、褐色ではなく淡い緑色の光を帯びていた。
がらんと転がった、玄関先に置きっぱなしの水が張られたバケツ。そこから、昨日の花火の痕跡が悲しく辺りに散乱し行き場もなく宙に浮游した。
「咲……羅……?」
だが咲羅はそのまま振り返らず、開いた距離はどんどん離れてゆく。
「咲羅!」
刹那の呼びかけに立ち止まると振り返り、だがしかし無表情でじっと佇む。
このまま行かせてはいけない――。そんな思いから、咲羅のもとへ駆け寄ろうとするが、
《――来るな嘘つき!》
殺意と共に例外なく誰のもとにも届いた思念。ごうっという音を立てて咲羅を中心に生じた風圧が刹那たちを襲う。
「――っ!」
弾き飛ばされぬよう地に踏ん張りをつけ、風圧から庇うように顔の前で翳(かざ)した腕。その間から目を細め離れた咲羅を見据える。
棚引く茶色い髪の間から一瞬覗いた咲羅の虹彩は、褐色ではなく淡い緑色の光を帯びていた。
がらんと転がった、玄関先に置きっぱなしの水が張られたバケツ。そこから、昨日の花火の痕跡が悲しく辺りに散乱し行き場もなく宙に浮游した。
