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【S】―エス―01

第32章 原点

 ゆっくりと紫煙を吐き出し訊き返す。


「兄さんは、大量に造り出された僕らがその後どうなったか知りたくない?」


 質問に対する思わぬ刹那の投げかけ。と同時に、瞬矢の脳裏にひとつの単語がよぎる。


 ――【sample】。


 それは2年前、瞬矢が病院で目覚めた際に居合わせた刑事の新田 香緒里から直接得た情報。


 また、それらがどのような目的で利用されたのか気になりはした。だが……、


「そんな情報どこで?」


 すると刹那は身を乗り出し何やらズボンの右ポケットを探る。


「これさ」


 そう言い刹那が取り出したのは、2種類のメモリーカード。恐らく、ひとつは前述した刑事――新田 香緒里の父親が彼女に遺していた物だろう。


 だがもう一方は――。


 瞬矢は黙考し、手元の煙草に視線を落とす。徐々に侵食する煙草の火が、先端からじりじりと炭化してゆく。


 再度刹那へ視線を移すと、


「僕らの原点は『東雲 刹那』。そこから造り出された僕らがどうなったか、その全てが記録されてるはずだ」


 同様に一度半目した後、再び右手に持った2種類のメモリーカードへ茶色い双眸を向ける。
 

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