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【S】―エス―01

第32章 原点

 情報源こそ明かさなかったが、その言葉から、刹那もはっきりと内容を確認してはいないのだろう。


 メモリーカードの記録内容を確認したいのはやまやまであったが、生憎ここにはパソコンやそれに付随する端末が存在しない。


 内容を確認できるのは、もう少し先になりそうだ。


「分かった。で、あの場所ってのは――」


 手にしていた煙草をテーブルの上の灰皿に当て、トン、と灰を落とす。


 ――そして現在。


 眼前の彼は『東雲 刹那』の墓を暴きに行くというのだ。そう、あの場所とは屋敷跡の裏地。


 以前あの墓を見た時、塗り潰してある以外は特別変わった様子などなかった。


 だが、刹那の呈した案に全面的な異論がある訳ではない。


 では、なぜそのようなことをする必要があるのか。それはやはり、『彼』が自分たちのオリジナルであることに起因する。


「じゃあ兄さんは、墓の中まで確認したの?」


 刹那の発言は、まるでそこにあるべきものがない、とでも言っているようであった。
 

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