
【S】―エス―01
第32章 原点
……本来あるべきもの。そう、オリジナル『東雲 刹那』の遺骨。
「いや、それは……」
当時のことを思い出し、瞬矢は言葉を濁す。
あの時はそれどころではなかった。何せ、死んだと思っていた弟が生きており、尚且つ同じ名の入った墓石があったのだから。
なので、刹那が言うように墓の中までは確認していない。
(もしかしたら、本当に……)
刹那の発言を受け、瞬矢の脳裏にふっとそんな考えがよぎる。
きっと、ここまで言うからにはその場所に何かあると確信しているのだろう。
兎も角、そこへ行ってみれば、また当時では知り得なかった事実が分かるかもしれない。
瞬矢は了承の意を示すべく、視線を送りひとつ頷く。
「決まりだね」
窓から差し込む柔らかな日の光を背に受け、目を細めた刹那はにこりと笑んだ。
「私も行くよ」
突然、なんの前触れもなく聞こえた鈴の音のような声に、瞬矢と刹那の両者は居間の入り口付近へ視線を向ける。
いつからいたのか、どこまで聞いていたのか……。
そこにはショートパンツと黄色いノースリーブシャツの上に、薄手のパーカーを羽織った茜が立っていた。
