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【S】―エス―01

第32章 原点

 茜の姿を見て、瞬矢たちはほぼ同時に、そして同様に形作られた両目を丸くする。


 だが構わず茜は続ける。


「瞬矢たちのことなら、私も知りたい!」


 そう言い唇を固く閉じ見据える茜の茶色い瞳の奥には、確かに意思の強さを表す一閃の光を宿していた。


 恐らく説得しても無駄であろう。


 瞬矢は見開いていた瞳を微笑みをもってふっと細め、茜のもとまで歩み寄る。右手を彼女の頬に這わせ、黙して頷く。


 それを見ていた刹那も同意して表情を和らげ微笑み、一言。


「じゃ、行こうか?」


 くるり、自身の左斜め後ろにある玄関の方へ踵を返す。


 こうして3人は『東雲 刹那』の墓へと向かうこととなった。



     **


 彼らのいた別荘から目的の場所までは、車で小1時間ほどの距離である。山間を通る為、街中から走らせるよりはいくらかましだが、それでも多少の時間を要してしまう。


 ――午後3時09分。


 瞬矢たち3人の乗った黒い軽自動車は、鬱蒼と茂る枝葉が空を覆い日の光を遮る林道へと入ってゆく。
 

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