
【S】―エス―01
第32章 原点
林道を抜けると、遠く左側の山並みに規則的に並ぶ鉄塔が姿を現す。
「2年ぶり、かぁ……」
当時のことでも思い出しているのだろうか。助手席でずっと窓の外を眺めていた茜が、沈黙を破りぽつり呟く。
一旦車を停めた瞬矢、そして後部座席の刹那も窓の外に視線を送る。
きっとここにいる誰しもが、それぞれの胸の内にある記憶に思いを馳せているのだ。
瞬矢は遠く山裾に一定間隔で並ぶ鉄塔を見て、初めてここへ来た時のことを思い出す。
「ほんと、あの時以来だな」
それだけ返すと瞬矢は正面へ向き直り、止めていた車を走らせる。再び車内に沈黙が漂う。
やがて目の前に屋敷の跡地が見え始め……。坂を登りきった車は、当時のまま屋敷の跡だけを残す敷地内に止められた。
エンジンを切り下車した瞬矢たちは手提げ鞄をひとつ担ぎ、屋敷の裏手にある山へと回る。
空いた手には、いつ必要になるかもしれない作業用のスコップが念の為握られていた。
屋敷跡の裏手から、伸び放題の枝葉が8月の日差しを和らげ覆う。木々の間を抜け、通ったのは件の墓地へと下りる細い獣道。
変わらぬその場所に、今も変わらぬ姿で『それ』はあった。
「2年ぶり、かぁ……」
当時のことでも思い出しているのだろうか。助手席でずっと窓の外を眺めていた茜が、沈黙を破りぽつり呟く。
一旦車を停めた瞬矢、そして後部座席の刹那も窓の外に視線を送る。
きっとここにいる誰しもが、それぞれの胸の内にある記憶に思いを馳せているのだ。
瞬矢は遠く山裾に一定間隔で並ぶ鉄塔を見て、初めてここへ来た時のことを思い出す。
「ほんと、あの時以来だな」
それだけ返すと瞬矢は正面へ向き直り、止めていた車を走らせる。再び車内に沈黙が漂う。
やがて目の前に屋敷の跡地が見え始め……。坂を登りきった車は、当時のまま屋敷の跡だけを残す敷地内に止められた。
エンジンを切り下車した瞬矢たちは手提げ鞄をひとつ担ぎ、屋敷の裏手にある山へと回る。
空いた手には、いつ必要になるかもしれない作業用のスコップが念の為握られていた。
屋敷跡の裏手から、伸び放題の枝葉が8月の日差しを和らげ覆う。木々の間を抜け、通ったのは件の墓地へと下りる細い獣道。
変わらぬその場所に、今も変わらぬ姿で『それ』はあった。
