テキストサイズ

【S】―エス―01

第32章 原点

 瞬矢は手に持っていた作業用スコップを落ち葉の積もった地面に放る。放物線を描いたそれは、湿った土と枯れ葉の上に着地した。


「そうだね」


 対して相槌(あいづち)を打った刹那も、同様に持っていた手提(さ)げ鞄を地面に置く。


 それを横目に瞬矢は、墓石の上にかかった落ち葉を手で掃き取り、その下から露となった納骨スペースの石の扉に手をかける。


 石の擦れ合う重々しい音がし、真実を闇へと閉ざす扉がわずかに動く。3人の間に言い知れぬ緊張が走り、扉へかけた手には薄らと汗が滲む。


 太陽はすでに西へ傾き、山の瀬にその姿を潜め始めていた。


 木々の合間から覗くオレンジ色の空をちらと見やり、一気に納骨スペースの扉を開ける。


「そんな……!?」


 2年越しに暴かれた墓の中身を目の当たりにし、それ以降に続ける言葉を失う。


 そこにあるはずのものはなく、あったのは扉を開けた際に落ちたと思われる枯れ葉と細い枯れ枝のみ。


 だが日の下に晒されたのはスペースのごく一部でしかなく、改めて奥の方を確認してみることにした。


 瞬矢は地面に片手をつき、前屈みに奥を覗き込む。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ