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【S】―エス―01

第33章 計画

 瞬矢は返却されたそれを左手で受け取りながら、尚も問い質す。


「数字のことは分かった。だが、なんであんたの息子の遺骨が本来あるべき場所にない?」


 すると彼は眼鏡の奥の両目を見開き、びくりと肩を震わせる。


「それは……」


 俯き言い澱むその姿から、間違いなくそこに核心があるのだろう。おおよそ知り得なかった、全貌へと続く核心が。


 すると、今まで瞬矢の後方でやり取りを聞いていた刹那が前に歩み出て追い打ちをかける。


「答えてもらうよ。君たちが、大量に造り出した僕らを使って何をしようとしてたか」


 口調こそ穏やかなものであったが、漂う雰囲気は彼からは想像もできないほどの冷徹さを孕んでいた。


(刹那……)


 瞬矢は、苦虫を噛み潰したような表情で黙って刹那の後方からわずかに覗くその横顔を見つめる。


 彼が東雲 暁に対して向けたそれは咲羅への想いからか、はたまた出生を自分と同じくしながらも無下に扱われた同胞を想ってか。


 ……いや、恐らくその両方だろう。


 言い逃れは効かないと悟ったのか、東雲 暁は口元に手を当てぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。


「……私じゃない。全てはあの男の考えだよ」
 

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