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【S】―エス―01

第33章 計画

 
「『あの男』?」


 今さら責任転嫁しようとでもいうのだろうか。刹那の目がすうっと細められ、訝り顔を見せる。


「あの男は国政と蜜月し預けた細胞を使って、新たに強力な兵器になりうるクローン体を造り出そうとしていた。私がそれを知った時には、すでに……」


 何か思い当たる節があるのか、刹那の表情が一変する。


「『あの男』って?」


 その問いかけに、東雲 暁は尚も俯き加減のまま呟くように答えた。


「……男の名前は、ハロルド……ハロルド・ドルト」


 『ハロルド』その名前を聞いた途端、今まで訝しげに細められていた刹那の目がこれ以上ないほどにかっと見開き、明らかに冷静さを欠いていた。


 『ハロルド・ドルト』――ネッカー渓谷にある4古城を所有するドルト家。彼はその血縁だというのだ。


 新たなる強力な兵器の創成。東雲 暁の……彼の語ったそれは、メモリーカードの記録内容とも関係があるのだろうか。


「なら、咲羅は――!」
 

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