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【S】―エス―01

第33章 計画

 かくいう瞬矢も、本当のところもう茜に以前のような危険な思いをさせたくはなかった。


 半分冗談、半分本気のニュアンスを込めて茜本人の意思を問う。


 だが返ってきたのは、至って真剣な答えだった。


「確かに、一緒にいたのはたった数日だよ。でも私だって、咲羅のこと助けたい!」


 困ったことに、彼女の意思は予想以上に固いようだ。


 寄り添わせた体を起こすとソファの縁に斜めに腰かけ、茶色い双眸に確固たる信念を宿し、真っ直ぐじっと見据える。


 その瞳に宿る強い光は、人が人を想う心はつき合いの長さだけでは決して押し測れないと言っているようであった。


「……ったく、分かったよ」


 仰向けの状態で降参とばかりに両手を広げ苦笑し、ひとつ盛大な溜め息をつく。瞬矢の言葉に、茜は栗色の髪を揺らしにこりと満面の笑みを見せる。


(……そうだよな。大事なのは、過ごした時間の長さじゃない)


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