
【S】―エス―01
第33章 計画
◇2
4日、午後9時05分。
ドイツ――ネッカー渓谷、地下施設。
部屋から出てきたリンは遮蔽された金属製の扉に再びロックがかかったのを確認し、くるり背を向ける。
その時、向かって左側の通路から歩いて来る1人の人物が視界に留まった。彼もリンに気づき足先の方向を変え、着ていた白衣の裾を躍らせながら近づいてくる。
襟元に紺色のネクタイを締めたくすんだ金髪の人物こそ、咲羅を造り出した男――『ハロルド・ドルト』その人であった。
「今、咲羅には会わせられない」
「……『咲羅』?」
眼前に立つハロルドが、眼鏡の奥に潜む表情を険しく訊き返す。半歩詰め寄り、彼女の行く手を塞いだ。
対してリンはしまったとばかりに軽く握った右手を口に当て、彼の無言の追求に答える。
「S‐145……あの子は今、眠ってるわ。用事なら、彼が起きてからに」
それを聞き、それもそうだと訝(いぶか)り顔を見せていたハロルドの表情がにわかに解(ほぐ)れ、
「そうかい。なら、『あれ』が目覚めるのを待つとしよう」
そう言うと、詰められていた2人の間合いに、ほんの少しだけ穏やかな空気が流れた。
4日、午後9時05分。
ドイツ――ネッカー渓谷、地下施設。
部屋から出てきたリンは遮蔽された金属製の扉に再びロックがかかったのを確認し、くるり背を向ける。
その時、向かって左側の通路から歩いて来る1人の人物が視界に留まった。彼もリンに気づき足先の方向を変え、着ていた白衣の裾を躍らせながら近づいてくる。
襟元に紺色のネクタイを締めたくすんだ金髪の人物こそ、咲羅を造り出した男――『ハロルド・ドルト』その人であった。
「今、咲羅には会わせられない」
「……『咲羅』?」
眼前に立つハロルドが、眼鏡の奥に潜む表情を険しく訊き返す。半歩詰め寄り、彼女の行く手を塞いだ。
対してリンはしまったとばかりに軽く握った右手を口に当て、彼の無言の追求に答える。
「S‐145……あの子は今、眠ってるわ。用事なら、彼が起きてからに」
それを聞き、それもそうだと訝(いぶか)り顔を見せていたハロルドの表情がにわかに解(ほぐ)れ、
「そうかい。なら、『あれ』が目覚めるのを待つとしよう」
そう言うと、詰められていた2人の間合いに、ほんの少しだけ穏やかな空気が流れた。
