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【S】―エス―01

第34章 夢の断片

 
 ――白昼。大通りの真ん中を、目を伏せ歩く咲羅の姿があった。


 襟つきの白いシャツにジーンズを着た咲羅が足を踏み出す度、周囲のものを弾き飛ばす。


 伏せていた淡い緑色の双眸が前方を見据えた。その瞬間、


 炸裂音と共に車や建物、街灯、通りにある全てのガラスが一斉に砕け散る。地面には亀裂が入り、瞬く間に粉塵を上げ倒壊した。


「――!」


 午前1時28分。不可解な咲羅の夢に瞬矢は目を覚ます。


 刮目した瞳の色は黒から淡く光を帯びた水色へと変貌し、ベッドから起き上がると酷く耳鳴りがした。


(またか……)


 内心ごちた後、三半規管を乱されくらりとする感覚に頭を押さえ、固く目を瞑る。


「どうしたの?」


 布団から這い出しベッドの縁に腰かけた茜が、小首を傾げ様子を窺う。


 直後、数回部屋のドアを叩く音に、2人はそちらへ視線を送る。



 そして、瞬矢が咲羅の夢に目覚めたのとほぼ同時刻。


「――!」


 刹那――彼もまた、瞬矢と同じ夢を見、目覚めていた。


 瞳を薄紫色に染め、起き上がり視界を掌で覆い、もとに戻るのを待ち部屋を飛び出す。
 

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