
【S】―エス―01
第35章 綻び
◇2
ひやり、肌に触れるコンクリートが、そっと熱を冷ましてくれた。
初めて隔絶された暗い部屋の中でシリンダーに眠る『刹那』を目にし『彼ら』を見た時、リンは父親のやっていたことを悟った。
(なんとしても、あの子だけは……)
壁に寄りかかったままのリンは、蹲(うずくま)るように自身の体を抱き竦めた。
その時、部屋の入り口に人影が立つ。その人影は後ろ手にゆっくり、ひたひたとこちらへ歩み寄ってくる。
誰かと訊ねなくとも、人物の正体はくすくすと笑うその声ですぐに把握できた。
(咲……羅……?)
通路からのわずかな逆光を受けた彼は、目の前でぴたり立ち止まると前屈みに顔を近づけ囁く。
「君を助けてあげる。僕に力をくれたお礼だよ」
薄く笑みを湛えつつリンの前髪を掻き分け、そこに自らの唇を寄せる。ほんの一瞬、額に柔らかな感触が伝わり離れる。
リンはゆっくりと離れてゆく咲羅の姿に刹那の面影を見た。
くるりと踵を返し、部屋の入り口へ向かって歩き出す。
「あ、そうだ!」
ひやり、肌に触れるコンクリートが、そっと熱を冷ましてくれた。
初めて隔絶された暗い部屋の中でシリンダーに眠る『刹那』を目にし『彼ら』を見た時、リンは父親のやっていたことを悟った。
(なんとしても、あの子だけは……)
壁に寄りかかったままのリンは、蹲(うずくま)るように自身の体を抱き竦めた。
その時、部屋の入り口に人影が立つ。その人影は後ろ手にゆっくり、ひたひたとこちらへ歩み寄ってくる。
誰かと訊ねなくとも、人物の正体はくすくすと笑うその声ですぐに把握できた。
(咲……羅……?)
通路からのわずかな逆光を受けた彼は、目の前でぴたり立ち止まると前屈みに顔を近づけ囁く。
「君を助けてあげる。僕に力をくれたお礼だよ」
薄く笑みを湛えつつリンの前髪を掻き分け、そこに自らの唇を寄せる。ほんの一瞬、額に柔らかな感触が伝わり離れる。
リンはゆっくりと離れてゆく咲羅の姿に刹那の面影を見た。
くるりと踵を返し、部屋の入り口へ向かって歩き出す。
「あ、そうだ!」
