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【S】―エス―01

第37章 傀儡

 夢とも現実とも判断のつかない中、身を捩る少年。彼は椅子に座っているが、革製のベルトでしっかりと固定されている為、手足は動かせない。


「何、するの?」


 不安げな口調と面持ちで見上げ、訊ねる。少年の服装はこの部屋の気温からしてみれば薄着で、コートの一枚も羽織っていない。


 薄く開いた口の端から白い息が漏れる。


 だが訊かずとも分かっていた。誰も、少年の求めた真実を答えてなどくれる訳もないことを。


 ただ灰色の壁の向こうで誰かが見ている、そんな気がしていた。


 ただでさえ寒々しい着衣の袖口を捲られた右腕にぷつりと針が刺さり、体内へ薬品が送られる。


 途端、血液が沸騰し逆流するような感覚と、細胞ひとつひとつを引き裂かれるかの如き痛みが駆け巡る。
 

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