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【S】―エス―01

第37章 傀儡

 ◇3


 四方をコンクリートで塗り込められた薄暗いその部屋には、張り詰めた空気が漂っていた。


 自身のこめかみに銃口を突きつけるリン。その左後方で薄く笑みを湛え、刹那を舐めるような視線で見据えるハロルド。


 刹那は、鋭く射抜くような視線と表情で彼を睨み悩んだ末、苦渋の決断を下す。


「……分かった。ただ条件がある」


「条件?」


 一瞬、彼の両目がすうっと細まる。口元に微笑を湛えたまま、だが、どこか訝った口調でハロルドは問う。


「僕らのオリジナル――『彼』だよ」


 そこでようやく刹那の口の端から笑みが漏れる。


 条件として呈示した自分たちのオリジナル。それは勿論、『東雲 刹那』のことを示している。


「『彼』をどうするんだ?」


 ハロルドの投げかけた疑問に、刹那は目を伏せ肩を竦める。


「別に。ただ、自分の原点には会っておきたいものだろう?」


 自分たちのもととなった存在がいるのなら、目にしておきたいと思うのは、刹那にとって当然の心理だった。


 だがそれに対し彼は「そういうものかね」と、気のない返事をひとつ返し半目する。


「まぁ、いいだろう」
 

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