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【S】―エス―01

第5章 接触

 だが、すぐさま艶やかな黒髪の下に表情を隠し答えた。


「さぁ? むしろ俺が知りたいね」


 窓から差す逆光の中、口角をつり上げそう言う彼の風貌は、あまりにも整いすぎている。


 どこか人知を超えたものすら感じさせる、完成された美。


 『刹那』が出したという手紙を預かり、部屋を後にした。


 建物を出たところで立ち止まり、今一度預かった手紙に目を通す。


(【S】……それに『刹那』……)




 ……――ぞくり。


「――っ!」


 ビルの合間から纏わりつくようなおぞ気の走る視線を感じ、振り返り周囲を見回す。


(今、誰かに見られてたような……)


 振り返った先に誰もいなかったことに対し香緒里は、怪訝(けげん)な表情で顎に手をあておかしい……としきりに首を捻る。


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