
【S】―エス―01
第5章 接触
それを見た山田は、くすりと微笑む。
「茜ちゃん、ほんとは彼のこと好きなん――」
「ち、違いますっ!」
言い終えるが早いか、咄嗟に立ち上がり否定した茜の頬が淡く色づく。
山田は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐさまにっこりと笑い「ほら、むきになってる」と返す。
「――っ」
その言葉を受けて、茜は自分でも分かるほど耳のあたりまで熱くなっていることに気づいた。
恥ずかしさに肩をすくめ、小走りで公園を立ち去る。
**
「はぁ……」
口をついて出るのは重い溜め息ばかりだった。
(あんな奴、別に……)
堂々巡りな思いがなんとも馬鹿らしくなり、茜はそれ以上考えることをやめた。
終業し校舎を出ると、5月の湿気を帯びた空気が肌に纏わりつく。
一向に心の靄(もや)は晴れなかったが、それでも自然と足は瞬矢のもとへ向かっていた。
大通りへ出たところで刑事、新田 香緒里の姿が視界に入る。
「まだ……何か?」
茜は眉根を寄せ、明らかに不機嫌な顔で訊ねた。
思い出されるのは、六野が焼死体で発見された河川敷での出来事だった。
**
「茜ちゃん、ほんとは彼のこと好きなん――」
「ち、違いますっ!」
言い終えるが早いか、咄嗟に立ち上がり否定した茜の頬が淡く色づく。
山田は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐさまにっこりと笑い「ほら、むきになってる」と返す。
「――っ」
その言葉を受けて、茜は自分でも分かるほど耳のあたりまで熱くなっていることに気づいた。
恥ずかしさに肩をすくめ、小走りで公園を立ち去る。
**
「はぁ……」
口をついて出るのは重い溜め息ばかりだった。
(あんな奴、別に……)
堂々巡りな思いがなんとも馬鹿らしくなり、茜はそれ以上考えることをやめた。
終業し校舎を出ると、5月の湿気を帯びた空気が肌に纏わりつく。
一向に心の靄(もや)は晴れなかったが、それでも自然と足は瞬矢のもとへ向かっていた。
大通りへ出たところで刑事、新田 香緒里の姿が視界に入る。
「まだ……何か?」
茜は眉根を寄せ、明らかに不機嫌な顔で訊ねた。
思い出されるのは、六野が焼死体で発見された河川敷での出来事だった。
**
