
【S】―エス―01
第5章 接触
「電話……しなきゃ」
ただ恐怖感からか無性にそうしなくてはならない気がした。制服のスカートのポケットから携帯を取り出す。
震える手でかけたのは、携帯ではなく固定電話。
携帯電話の向こうで機械的な呼び出し音が鳴る。
(お願いっ、瞬矢出て……!)
『――どうした?』
通話口から聞こえてきた声に多少の安心感を覚え、ほっと胸を撫で下ろす。
「瞬矢、どこにも行ってないよね?」
『――ああ、ずっとここにいたけど……』
「そんな……」
背筋が凍りつく。
(じゃあ、私が見たのは誰?)
「……ううん、なんでもない。戻ってから話すよ」
携帯を耳から離し、終話ボタンを押す。
見上げた空は、今にも泣き出しそうなほど重く垂れ込めていた。
携帯を握りしめ、その場にへたり込んだまま自身の体を抱きすくめる。
体の震えが止まらない。
これから先、何かとてつもなく恐ろしいことが起こるんじゃないか。そんな気がしてならなかった。
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