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【S】―エス―01

第5章 接触

 「……そうか」と溜め息混じりに溢し、さらに続ける。


「言いそびれてたんだが、実は――」


 瞬矢は斎藤家の実子……つまり、本当の親子ではなく10年前に引き取られた【養子】だというのだ。


 そこで茜は先刻、新田 香緒里の宣った彼の身内に『刹那』という人物はいない、という言葉に信憑性を抱く。


 だが、だからといって同一人物とは考えられなかった。


「本当の親が誰かなんて知らないし、知りたいとも思わない。けど……」


 頬づえをつき、物思いに穏やかな笑みを見せ言った。


「お袋がああまで喜ぶなんて。今回ばかりは、あいつに感謝しないとな」


 彼のそんな表情を見た茜も、つられて自然と笑みが溢れる。


「たまには帰ってあげなよ」


「そうだな」


 その時、ガラステーブルの片隅で銀色に光る何かが茜の目に留まる。


「――! 腕時計?」


「さぁ、壊れてるみたいだし。でもこれを見た時、なんだかとても厭(いや)な感じがしたんだ」


 そう言い、腕時計に刻まれた【S‐06】というシリアルナンバーを見せる。
 

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