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【S】―エス―01

第7章 再会の旋律

 もうだいぶ慣れ親しんだ、当たり前のようになった温もりの中に、わずかにひやりとした感触が残るそれは、部屋の鍵だった。


 見上げた茜に瞬矢はにこりと笑い、まるで「ちょっと行ってくる」とでも言わんばかりに再び背中を向ける。


 それは、子供に留守番を頼むものと酷似していた。茜はその後ろ姿を黙って見つめる。



 1人残された茜は、制服姿のままがらんとした部屋を見渡す。


 いつもこのドアを開ける度、ふんぞり返ってふてぶてしい笑顔を覗かせていた彼。


 その姿を窺えないことが、今ではどこか寂しく感じられる。


 鼻から抜けるような溜め息をつき、持ち主不在のソファに力なく座り込む。


 頬づえをついたりしてみたが、やはりそれは埋まることはなく、やがてごろりと寝転がる。


 まるで、心にぽっかりと穴が空いたような感覚だった。


 オレンジ色の夕日が、ブラインドの隙間から差し込み部屋を照らす。
 

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