友達以上恋人未満
第8章 元戻
私にありがとう、と言ったのは、
顔も雰囲気も、スーツのセンスも、
彼にそっくりの人だった。
驚いた顔を見せてしまったからか、
そのお客様は、
「え?どうかした?」
と聞いてきた。
「あ、いえ。すぐおしぼりお持ちしますね」
私はすごく
ドキドキしていた。
今まで忘れていた彼のことが
頭から離れなくなった。
いや、本当は
忘れてなんかなかったんだ。
心のどこかで、
また会いたいと思っていた。
きっと彼はまだ、
寂しさを一人で埋めれずに、
優しげな表情の裏に
寂しさを出してしまっているんだろう。