風景画
第24章 intermezzo 夢幻〜ペガサスの祈り
しんと静かな宙
天上の城に微睡む姿は
差し込む月明かりに淡く浮かぶ
…けれど何かが
眠りのベールを引き裂いた
ゆっくりと顔を上げ
虚空を見つめるオニキスの瞳
誰だ、俺を呼ぶのは?
闇へ向かって誰何する彼の耳に
今ひとたび、と
地上より届く切なる叫び
ペガサスは身震いとともに
真珠色の翼を広げ
声の主、騎士のもとへと
翔け急ぐ
折しも騎士はその腕に
いましめの解かれた姫を抱き
吹き上げる炎に追われながら
高楼の階段を駆け上がる
もはやこれより先は…
ともに身を投げるばかり
その刹那
ペガサスは二人をその背に
受けとめた
時は静寂を取り戻す
それは昔日
結ばれ得なかった騎士と姫の
命を賭しての再会…
熱く抱き合うふたりを
今 黄昏がゆっくりと包みゆく
不滅の愛の気高さ
愛し合うふたりが
未来永劫
その身を別つことのないように
ペガサスの祈りは
天の高みへ上りゆく
(了)