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風景画

第27章  poemtory〜迷宮絵画




入りこんだ迷宮の奥深く

足音ばかり響く石畳

手探りの壁は冷たく

ひとり 歩き続ける



あてどなさに

泣きだしてしまいそうに

震える心…



不意に轟くその声は

私の五感を凍らせる



『いづこへ行き給う?』



怯えが聞かせる幻聴なのか

言葉を失い立ちすくみ

早鐘を打つ胸の鼓動を

押さえていた



『いづこへ向かう?』

再び問う声



「愛する人のもとへ…」

振り絞る言葉はそれでも小さく

たちまち闇に捉われる



『では答えるがいい

永遠の愛

無償の愛

不滅の愛

どれを望むか』



考えるまでもない



「望むものはない

そのすべては

私の胸にこそある誓い

今は

あの人を愛している

その想いだけなのだから」



目の前で光が、はじける…!



気が付けば

一枚の絵に向かい

たたずんだままでいた



『迷宮夢想
〜迷いの先に見えるもの
作者年代不詳』



絵に魅入られたひとときの記憶が

この手に残る



……ああ

あなたに会いたい







(了)


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