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風景画

第30章  時雨月 ③




切崖に立つ鳥は

願いをこめて

風を待つ



力ばかりの飛翔能わず…



刻まれた記憶

太古からの教えのままに

風を待つ



風を待つとは

時を待つこと

はやる心と闘うこと



高い空に

彼の五感は揺さぶられ

浮かぶ雲に宥められ…



やがて

ひときわ強く吹き上がる白い風

彼は目を細め翼を広げる



時にかなったその姿



遥か高みへ翔けのぼる







(了)



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