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風景画

第33章  intermezzo 今宵の月 〜半月と黒白猫




光と影

両方の毛色を持つ彼は

ワイナリーの守り猫

葡萄を醸す香りに包まれ育った



お前はこのシャトーの騎士…



主人の言葉と誇りを胸に

ワインの眠りを見守り続ける



けれどある日

運命は反転し

シャトーは人の手に渡る



明け渡す日の朝靄に

彼は探す主人から身を隠す

必ず戻ると胸に秘めた

主人の思いに心を添わせ

彼は残ることを決めていた…



そして今まで通りワインを見守る

たとえ

シャトーの住人が変わろうと



時はゆき、時は去り



彼は葡萄園に佇みながら

幾度か過ぎた収穫の時を数える



待つことはなんでもなかった

待てなくなることに比べれば

けれど…



しじまに零すため息に

夜空に浮かぶ半月が

返すものは何もなく

弱る心をもてあます



とその時

彼の耳は聞きつける

繰り返し彼の名を呼び近づく声

懐かしいその響き



彼は束の間天を仰ぎ

その声のもとへと歩き出す

高く 高く 尾を掲げて







(了)



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