風景画
第61章 poemtory 〜カウンター憧憬
カウンター越しに見る窓の遠くは
澄んだ夜空と星明かり
その煌めきは
太古からの星の夢を語るようで
心が騒ぐ
頬杖をつきながら
少し度数の高いビールを
口に含めば
深く薫る苦みが鼻腔をくすぐり
喉を潤しながら落ちてゆく
寒いはずなのに
何か
体の芯は熱いように思えて
冬はビールが味わい深い
不思議だね…
空いたグラスに
雫だけが虚しく残る
…幻の酒、奇跡の酒
聞いたことあるでしょう?
更に高い度数のビールを
受け取りながら
カウンターの中へ話しかける
中でも心惹かれるのは
難破船の奥に
眠っていたワインかな
どんな夢を抱いていたものか
コルクを抜いた瞬間の声に
そっと耳を澄ませてみたいね
ワインを愛するひとりの人を
想い浮かべて夢を見る
…今宵は
新しいボトルの声を
聞いてみようか
マッカランの封が切られ
グラスに向けて
鼓動のような響きが
夜のしじまを流れてゆく
(了)